雨色キャンパス




しゃらしゃら。降り注ぐ雨のカーテンの中であいつはくるくると廻る。水分を含んで重たくなったシャツに構いもせず、これまたずぶ濡れなスカートをはためかせて。雨はすきだと、何時だったかあのへらり顔で告げたはとてもきれいだった。真っ白なキャンパスに青色の絵の具を落とすように、あいつは俺の心の中に収まった。そして今まさに、俺は眼前のキャンパスに青色の絵の具を落とした。モデルは、あの能天気な女だ。窓には雨垂れの水滴が幾つも重なり視界を妨げる。だけど今俺の瞳に映ってるのはだけだ。あいつが俺の名を呼ぶ度、可笑しいくらい心が震える。未だ視界の中で踊っている、たった一人の少女。馬鹿だ。風邪ひいたって、知らねぇからな。


「馬鹿は、俺か」


誰もいない美術室に響いた俺の独り言は、もちろんあいつにも届かない。だけど、それでいい。へらへら笑って、馬鹿みたいに雨ん中走り回ってるようなおまえが好きなんだから。雨はまだ、止みそうにない。




end.
(美術部葦護!)