「スマイル0円お願いしま〜す」 「ばかじゃないの?」 へらへらしながら言った葦護に対してしかめ面で一蹴すると、「ちゃんお客様に対してなんて態度なの!」と店長から怒られた。 「ていうかなんで来るの」 注文を取るふりをして店長のいるレジに背を向け、は葦護を睨む。レジからこの窓際で端っこの席は遠いから、こちらの会話は向こうに聞こえない。ドアからこの席まで案内するときに店長の視線が少々痛かったが、今は会計のためにの方は見てなかった。 「最近バイト代が上がったって言うから、その働きぶりを見にきたんだよ」 「あいにく当店はあのファーストフード店じゃないのでスマイルは扱ってませんけど」 「あいにくお金がないんですよ」 結局葦護と、一緒に来ていた友人は安いコーヒーを頼んだ。友人は葦護とのやり取りを無言で見つめていた。(呆れてたのかもしれない)名前は天化とかいう人だったと思う、とは注文票を調理場でスタッフに読み上げながらぼんやりと考えた。ホールから出る前、レジの横を通り過ぎるときに店長から「スマイルの方がちゃんの彼氏なの?」と突然聞かれて思わず違いますと全否定してしまったことの方が頭の半分以上を占めていたが。 あの2人はクラスが違うのにいつからか仲が良いらしかった。この前も2人で何事かについて熱心に語り合っていたので聞き耳を立ててみたら、いま話題のセクシー系歌手についての話で盛り上がっていた。 コーヒー二つだけなんてなんだか味気ないし、やっぱり折角来てくれたんだからなぁなんて思って、奢りで一品だけ持って行くことにした。(食べ物系のメニューの中では一番安いやつだけれど) その三つをテーブルに持って行くと、2人はとても驚いた顔をしていたが、天化の方はにありがとうと言い、葦護はさすがと言って嬉しそうに笑った。なぜだか本当に嬉しそうだったから、思わずもつられて笑ってしまった。 葦護は、がホールから出て行ったあと天化に、あいつ可愛いだろ〜とか言ってたらいいと思う。 戻る 06,04,04 |